市役所職員であるが、友人に講演を依頼されたけど、講演料をもらっていいのかわからない。
消防署員であるが、地元中学校のクラブ活動の有償コーチになってもいいのかわからない。
実は、公務員には副業の許可基準があり、その基準を満たせば副業も可能です。
全国的にも公務員が副業している事例が徐々に増えてきています。
この記事を読めば、副業の許可基準がわかり、公務員でも副業が行えるようになるでしょう。
公務員が認められる副業の許可基準について、具体的な事例を交えてお伝えします。
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公務員が認められる副業の許可基準は?
時間数の基準、副業先の基準、報酬の基準、これが副業の許可基準です。
時間数の基準は、週8時間または1ヶ月30時間を超えないこと、副業の勤務時間が1日3時間を超えないこととされています。
副業先の基準は、副業先の団体や法人ごとで決められています。
そして、副業する団体や法人によって活動実績が必要になるなど対応が異なります。
報酬の基準は曖昧です。
「社会通念上相当と認められる程度を超えない額」、つまり、常識的に適当とされる程度となっています。
国家公務員法における規定
国家公務員の副業は国家公務員法第103条と第104条で規制されています。
詳しくは人事院が発表している「義務違反防止ハンドブックー服務規律の保持のためにー」に記載されています。
これから、その第103条と第104条について、わかりやすく説明していきましょう。
国家公務員法第103条
「役員兼業」とは、国家公務員が営利目的の企業役員になることを指します。
国家公務員は、営利企業の役員になれません。
そして、国家公務員は、名義だけでも役員となることも禁止されています。
「自営兼業」とは、一定規模以上の不動産賃貸業や太陽光発電による売電、農業などのことです。
自営兼業は上司の承認を得た場合には可能とされています。
自営が承諾されるときの基準は、副業と公務が利害関係がないことや、公務が公正性と信頼性を損なわないこととされています。
国家公務員法第104条
この法律は、103条で決められている副業以外の副業も規制しています。
副業の基準は、報酬を受け取るだけでなく、定期的にあることまたは継続的に業務することです。
副業が許可されない基準として、以下の5つがあります。
- 副業の責任者になるもの
- 副業先と公務との間に利害関係があるもの
- 副業のために勤務時間をさくことで公務に支障が出るもの
- 副業によって心身に疲労が生じて公務に悪影響を与えるもの
- 副業によって公務員の信頼を損なうもの
この5つの基準に触れれば、副業は許可されませんので注意しましょう。
地方公務員法における規定
地方公務員は、地方公務員法第38条で副業のルールが決められています。
地方公務員の副業について、許可がない場合は、国家公務員法103条の「役員兼業」および「自営兼業」、国家公務員法104条の「その他のすべての報酬のある副業に勤めること」と同様に制限しています。
それでは、地方公務員法の第38条について、わかりやすく説明していきましょう。
地方公務員法第38条
地方公務員法第38条では、「役員兼業」および「自営兼業」、その他のすべての報酬のある副業に勤めることを制限しています。
また、地方公務員が報酬を受ける場合には任命権者の許可が必要です。
任命権者の許可基準は、各自治体の運用によって決められています。
各自治体は、独自に副業の許可基準のガイドラインや指針を作って運用している例があります。
そのため、地方公務員の副業は、各自治体のガイドラインに従って許可を得る必要があります。
何の副業なら許可される?(国家公務員の場合)
国家公務員はどのような副業ができるのでしょうか。
それは、一定の規模以上の不動産賃貸業や太陽光発電による売電、農業等が挙げられます。
これらは副業する場合、自営兼業承認申請書を申請して許可される必要があります。
非営利団体における副業はOK
国家公務員は非営利団体で副業ができます。
非営利団体の例として、国、地方公共団体、財団法人・公益社団、学校法人、独立行政法人、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人、一般社団・財団法人、同窓会、自治会・町内会、マンション管理組合などがあります。
ただし、公務と副業間に利害が発生している場合と、公務員としての信頼を損なう場合、経営責任者になる場合は、非営利団体であっても副業は認められないため、注意しましょう。
単発的な講演や雑誌等への執筆もOK
講演活動で報酬が発生しても単発的であれば問題ありません。
同様に、雑誌や新聞などに単発的に発表して報酬が発生したときも受け取っても問題ありません。
それは、第104条では、副業を継続的であること、または定期的に仕事している場合としているため、単発的な仕事を受ける場合は副業にならないからです。
ただし、「社会通念上妥当な報酬」ともされているため、報酬金額にも注意が必要です。
また、講演内容や執筆内容が、公務員の信頼を損なうような内容の場合も処罰される可能性があるため注意しましょう。
許可される条件
公務員が副業を許可される条件は、「公益的活動」であるものに限定されています。
公益的活動とは、以下の3つのポイントを満たす事業のことを指します。
- 社会福祉または公益を目的とした福祉サービスであること
- 心身の状況や、家庭環境、経済的な理由などにより支援が必要な人に対するサービスであること
- 無料か、低額な料金で提供されること
やりたい副業が公益的活動なのか確認する必要があります。
報酬額
報酬額については、第104条で「社会通念上相当と認められる程度を超えない額」としています。
では、「社会通念上相当と認められる程度を超えない額」とはどれくらいなのでしょうか。
国家公務員倫理規程第9条第2項には、「各省において利害関係者からの依頼に応じて行う講習等の報酬基準が定められている」と記載されています。
つまり、各省で報酬額の基準が違うということのため、それぞれで確認する必要があります。
従事する時間
副業に従事する時間は、職務専念義務の確保という規定から、以下の2点に注意しましょう。
- 一つ目は、勤務時間と副業の時間が重複しないこと。
- 二つ目は、副業の時間は、週8時間以下、1ヶ月30時間以下、勤務日は1日3時間を超えないこととされています。
これは、副業によって、心身が疲労して公務に悪影響を受けないためです。
申請手続きがされていること
副業の場合には必要な申請と手続きがあります。
必ず副業を実施する前に、「兼業許可申請書」に記入して各省で決められた手続きで許可を得ましょう。
「兼業許可申請書」と一緒に、副業先の契約条件が記載されている委託状や契約書、副業先への移動経路と移動時間がわかる書類、副業先の実態を確認する書類が必要となります。
各省で個別の手続きの方法がありますので、詳細は各省の人事担当に問い合わせましょう。
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何の副業なら許可される?(地方公務員の場合)
地方公務員で許可される副業とはどのようなものでしょうか。
地方公務員法第38条では、国家公務員法と同じように「役員兼業」と「自営兼業」、その他のすべての報酬のある副業を制限しています。
しかし、地方公務員の場合は、自治体ごとでガイドラインを作り、運用している例が増えてきています。
2017年4月には兵庫県神戸市、2017年9月には奈良県生駒市、2018年10月には長野県新富町と次々と事例が増えてきています。
具体的に何の副業なら許可されているのか、ご紹介します。
事例
地方公務員の副業は地方公務員法第38条で規制されています。
しかし、兵庫県神戸市で2017年4月に全国に先駆けて、公務員の副業許可基準を定めました。
2017年9月に奈良県生駒市、2017年10月には宮崎県新富町がこれに続きました。
先行して制度をはじめたこの3市町をきっかけに、2018年9月に長野県、2019年3月に茨城県笠間市、11月には北海道鹿部町で制度が導入されました。
このように公務員が副業している事例が徐々に増えてきています。
兵庫県神戸市
兵庫県神戸市は、全国に先駆けて公務員の副業許可基準を導入しました。
神戸市は、2017年4月に「地域貢献応援制度」を設けて、公務員の副業を一部認めるようになりました。
この制度は、高齢化などで人手が足りないNPO法人や地域の団体などに対して、公務員が勤務して、報酬を受けても良いというものです。
この制度を利用して、「NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」で、NPO活動を副業としている神戸市職員に初めて年俸が支給されています。
奈良県生駒市
奈良県生駒市では、2017年8月から職員が副業で地域活動する基準を決めました。
この基準で、以下のように公務員が副業する事例が出てきています。
消防署職員が「いのちの授業」というNPO法人に所属し、出前講座を有償で行っています。
また、消防職員が中学校の女子バレーボール部の外部指導者になっています。
他に、総務部の職員が、「ファンドレイザー」という仕事で市内の自治会や市民活動団体などの非営利組織の資金調達をしています。
このように生駒市では公務員が副業として、地域に出て積極的に参加できるようになっています。
宮崎県新富町
宮崎県新富町では、2017年10月から生駒市の制度を参考にして、公務員の副業許可基準を定めました。
新富町では、職員が地域神楽の舞手として報酬を受けています。
他にも、少年スポーツや中学校の部活コーチとして活動している職員もいます。
新富町では、人口減少によって地域活動が衰退する中、公務員が地域に出て、住民と一緒に課題解決に取り組める仕組みになっています。
そのため、勤務時間外で地域に貢献する活動であれば、報酬を得ることを認めています。
町長は農家の手伝いや高齢者の買い物支援、コンビニのアルバイトも想定していると述べています。
まとめ
この記事では、公務員が認められる副業の許可基準について、具体的な事例を交えてお伝えしました。
公務員が認められる副業の許可基準は、時間数の基準、副業先の基準、報酬の基準の3つの基準です。
国家公務員、地方公務員は副業が法律で規制されています。
しかし、公益的活動であり、報酬額、従事する時間、申請手続きがされているなど、条件を満たせば副業は可能です。
公務員が副業している事例が全国的に増えてきています。
皆さんも副業の許可基準に注意して、副業に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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